日本の識字率は本当に高いか?

日本の識字率について少し調べたので、それをまとめる。結論から言うと

識字率調査の現状

識字率に関する資料は、国会図書館の「識字率の調べ方」にまとまっている。このページに指摘されているように、識字率に関する公的な調査は1960年代以降行われていない。

戦後行われた調査

識字率に関する大規模な調査は2度行われている。まずは、GHQの国語改革の指令に基づくもので、「日本人の読み書き能力」(読み書き能力調査委員会編 東京大学出版部 1951)として出版された。これは全国の15-64歳の無作為抽出による男女21008人を対象に行われたものである。この調査の結果については、年齢別の非識字率が「識字能力・識字率の歴史的推移--日本の経験」に引用されているが、全体で2.1%が非識字者と判断されている。しかし非識字者の多くは55歳以上であり、青年層の非識字者は<1%である。

その後、1955年に文部省による調査が再度行われた。これは上記「識字能力・識字率の歴史的推移--日本の経験」によると、関東地域および東北地方の15-24歳2000人による調査であり、非識字者は関東で0.1%、東北で0.8%としている。ただし、これは調査に全く回答できなかったものの比率であり、「読み書き能力がなく、日常生活に支障があると明らかに認められるもの」の比率は関東で9.5%、東北で15.7%と報告している。

現在の非識字者の割合の検討

通常引用される99.8%といった数値は中学終業率をもって代用されたものである。しかし、日本の中学校は義務教育であり、公立中学校では成績不良等による懲戒退学はできない(学校教育法施行規則第26条第3項、Wikipediaの退学の項による)。また留年も義務教育では死文化している (Wikipediaの原級留置の項による)。よって、中学終業率をもって識字率に代えることはできないと思われる。

しかし、上記の戦後の調査によると、青年層の非識字者の割合は<1%であり、非識字者の多くが高齢者である。よって、その後学校教育の枠組みが大きく変化してはいないと考えると、現在では非識字者の割合は<1%となっていると考えられる。

しかし、国会図書館の「識字率の調べ方」は、「しかし、差別によって文字の読み書き能力を奪われたことによる非識字の状況は厳しく、就学率だけでは識字率の実態を把握しているとは言い難いとされています。」と指摘している。

また、全く読み書きができないことはなくとも、「読み書き能力がなく、日常生活に支障があると明らかに認められるもの」(「識字能力・識字率の歴史的推移--日本の経験」の言い方を借りれば機能的非識字)は10%ほど存在している。これが戦後の混乱によるものなのか、現代も引き続いているものなのかは不明である。

謝辞

国会図書館の「識字率の調べ方」は @esumiiさんに教えていただいた。