わたしを離さないで

何年か前の小説だけど、今更読んだ。(ネタバレあり)

素晴らしい作品だと思う。SFと読めば確かに陳腐だろう。しかし、この小説の素晴らしさは、キャシー、ルース、トミーの(主に)3人を創造し、その人物と人生を緻密に描いたことだと思う。

なんでそんなことをするのが素晴らしいかは、(素晴らしい)文学がなぜ素晴らしいかを語ることに等しくて、簡単でもないし野暮でもあるだろう。ただ、この3人の過酷な運命は、結局我々の運命とそれほど変わらないのではないだろうか。確かに、我々は、お金をちょっと奮発しないといけないけど、アメリカには行けるだろうし、運が良ければ小綺麗なオフィスで働くこともできるだろう。でもスターにはなれないだろうし、人生で可能な選択なんてそんなに多くない。ちょっと儲かればブランド物でも買ったりできるかもしれないけど、結局年老いて病に冒され、苦しんで死んでいくことには変わりない。結局3人の悲しみは我々の悲しみでありえる。

だとすれば、彼らクローン人間の悲しみは、我々の人生の悲しみを増幅したものと思えるのではないだろうか。少なくとも私は、そこにとても共感する。

ともあれ、お勧めです。